結婚後、ふたりは互いの表現活動を何よりも尊重し合った。田中裕子は『連続テレビ小説 おしん』で世界的な評価を確固たるものにし、昭和歌謡の黄金期を象徴するスターであった沢田もまた、年齢とともに深みを増すソロアーティストへと脱皮を遂げていく。夫婦でありながら、表現者として独立した個を保ち続けるスタイルは、当時の芸能界でも異彩を放っていた。
その共鳴が新たな形で結実したのが、2022年の映画『土を喰らう十二ヵ月』である。沢田が主演を務めたこの作品において、田中は劇中の重要な音声を担当し、直接的な共演ではないものの作品の背景で静かに共演を果たした。長年培われた互いへの信頼があるからこそ成立した演出であり、円熟味を増したふたりの芸術的シナジーを感じさせる出来事であった。