矢沢永吉のリーゼントが持つ最大の魅力は、荒々しさと繊細さが同居する独特の立体感にある。一見するとパワフルな立ち上がりだが、近くで見ると一本一本の毛流れが緻密にコントロールされていることがわかる。
伝説とも言われるスタイリング技法の基本は、濡れた状態からの「ベースブロー」にある。根元からドライヤーの風をあててしっかりと立ち上げつつ、サイドは後ろへ流すようにタイトに寝かせる。この段階でシルエットの骨格を決めるのがプロの技だ。仕上げには、上質なポマードやグリースを手のひら全体に伸ばし、前髪のフロント部分を斜め上に立ち上げながらバックへと繋げていく。毛先を後ろで交差させる「ダックテール」の美しいラインを生み出すには、粗めのコーム(櫛)を迷いなく一気にとおす思い切りの良さが不可欠だ。