人気と影響力が絶頂にあった2000年4月、上岡龍太郎さんは満58歳で芸能界から完全引退しました。芸能人が引退宣言後に復帰するケースが珍しくない芸能界において、上岡さんは引退後、亡くなるまでの約23年間、一度たりとも公のメディアや商業ステージに復帰することはありませんでした。
この電撃引退の真相は、決して突発的なトラブルや健康問題によるものではありませんでした。上岡さんは若手時代から一貫して「僕の芸は20世紀で終わる」「60歳(還暦)を迎える前にマイクを置く」と公言しており、その約束を自ら厳格に実行したのです。
背景には、「芸人の言葉に鮮度が失われ、時代とのズレが生じる前に身を引く」という徹底した美意識がありました。引退後は大好きなゴルフや趣味の時間を心から楽しみ、一般人としてのプライベートを静かに貫き通しました。言葉に責任を持ち、自らの引き際を完全にコントロールしたこの去り際は、今なお多くの後輩芸人や文化人から究極のプロフェッショナルとして畏敬を集めています。