なぜこれほど多くの人が、極めて初歩的な漢字でつまずいてしまうのでしょうか。取材を進めると、その元凶は小学校1年生で習う「万」という漢字との干渉(記憶の混同)にあることが見えてきます。
実は、「万」と「方」の筆順ルールは完全に逆になっています。「万」は1画目に横棒を書いたあと、2画目に「左払い(丿)」を書き、3画目に「横曲がり鉤」を書きます。つまり、「万」では左払いが先で、曲がりが後なのです。ところが「方」になると、曲がりが先(3画目)で、左払いが後(4画目)に指定されます。形状がこれほど似通っている二文字の間で、筆順の力学が正反対になっているのです。
教育関連の意識調査や漢字習得度テストの統計データを参照すると、成人の筆順テストにおいて「方」の3画目・4画目を正しく解答できた割合はわずか2割前後にとどまる年もあります。8割以上の大人が、無意識のうちに「万」と同じ感覚で左払いを先に走らせてしまっているのです。