結論から述べれば、一般的な英文や英単語を一文字ずつ縦にそのまま積み重ねて表記する手法は、ビジネス文書や公式な出版物においてマナー違反、あるいは「組版の初歩的ミス」と判定される。これには単なる見た目の好みを超えた、人間の脳と視線移動に根ざした明確な認知心理学的根拠が存在する。
日本語の漢字や仮名は、文字ごとに正方形の仮想ボディ(ボディサイズ)を持ち、上下左右どの方向へ並べても視覚的な重心が安定するように作られている。一方で、ラテンアルファベット(英語)は水平方向へ流れるプロポーショナル(可変幅)構造を前提に発展してきた文字体系だ。文字の高さを示すエックスハイト(x-height)や、上下に突き出るアセンダー・ディセンダーの組み合わせによって形成される「単語全体のシルエット(ワードシェイプ)」を、人間の脳は一瞬でパターン認識して意味を理解している。
アルファベットを一文字ずつ縦に並べてしまうと、このワードシェイプが完全に解体される。読者は単語を直感的に把握できず、一文字ずつ拾い読みして脳内で横方向に再構成する作業を強いられる。タイポグラフィの専門機関や印刷標準マニュアルにおいても、アルファベットの垂直配置は「サッカード運動(読書時の急速眼球運動)を妨げ、認知負荷を通常の3倍以上に跳ね上げる行為」として厳しく戒められている。読み手に過度な負担を強いる配置だからこそ、実務の世界で「マナーに欠ける」と批判されるのだ。