タキシードを着用する際、スーツとの差別化を完結させるのが専用の装飾品です。基本構成となるのが、蝶ネクタイ(ボウタイ)、カマーバンド(またはウェストコート/ベスト)、そしてプリーツやスタッドボタンがあしらわれたウィングカラーシャツです。
カマーバンドは、お腹周りを引き締めて見せる幅広の飾り帯ですが、着用時には「ひだ(プリーツ)を上向きにして巻く」という厳密な決まりがあります。これは19世紀後半、英国領インドの将校たちがベストの代わりに身につけ始めた際、オペラ座の入場券(チケット)やコインをひだの間に挟み込んだ歴史的実用性に由来します。
SNSやネットの質問掲示板を調査すると、結婚式や披露宴の現場で発生した痛恨の失敗談が多数散見されます。
「友人の海外ウェディングでタキシードを着たが、ベルトを通してしまい、ウエスト周りがもたついてスタイリストに慌てて外された」
「親族の結婚式でカマーバンドのひだを逆さま(下向き)につけて参列し、後から写真を見て赤面した」
大手ブライダルサロンのシニアコーディネーターは、現場の実情について次のように警鐘を鳴らします。
「タキシードのパンツにはベルト通し(ベルトループ)が存在しないのが正統です。ウエストはサスペンダー(ブレイシーズ)で吊り上げて着用します。ベルトをしてしまうと、カマーバンドが浮き上がり、ジャケットの前を開けた瞬間にシルエットが台無しになります。小物一つの付け方で、本物か急ごしらえかが一目で分かってしまうのです」