美術やデザインの現場で最も混同されやすいのが、「マチエール」と「テクスチャー(texture)」の使い分けです。どちらも質感や手触りを表す言葉として日常的に使われますが、そのニュアンスと文脈には明確な境界線が存在します。
英語由来のテクスチャーは、布地の織り目や木目、タイルの凹凸など、「ものの表面の触感や視覚的な肌触り・パターン」を客観的に指す言葉です。デジタルグラフィックの分野でも、平坦な画面にざらつきや陰影を付与するテクスチャマッピングのように、視覚効果全般に対して汎用的に用いられます。
対してマチエールは、素材そのものが持つ生々しい物質性や、作家が絵の具と格闘した痕跡(身体性)を色濃く反映した美術的表現です。「どのような素材を使い、どう手を加えた結果としてその表面が生まれたのか」という創作プロセスと物質の重みが分かちがたく結びついています。単なる表面の模様を超え、素材の物質感そのものが作品のメッセージとなっている状態を語る際、マチエールという言葉が選ばれます。