事業の不振や投資の焦げ付きが発生した際、最も警戒すべきリスクが一部の株主から提起される株主代表訴訟です。巨額の賠償請求から取締役個人と企業を守るためには、平時から以下の実務防衛策を徹底しておく必要があります。
1. 取締役会議事録と審議プロセスの詳細な可視化
意思決定を行う取締役会において、どのようなリスクが議論され、どのような反対意見や質問が出たのかを議事録に詳細に記録します。単に「原案通り可決」と記載するだけでは、法廷で適切な情報収集と議論が行われたことを証明できません。
2. 外部専門家のセカンドオピニオン取得
M&Aの企業価値算定(バリュエーション)や新規事業の適法性確認など、高度な専門性を要する案件では、独立した第三者機関(法律事務所、監査法人、投資銀行など)から客観的なレポートを取得しておきます。
3. 会社法上の責任限定契約とD&O保険のフル活用
定款変更による取締役の責任免除規定(会社法426条)の導入や、社外取締役等との責任限定契約(会社法427条)の締結を進めます。あわせて、役員賠償責任保険(D&O保険)の補償限度額を定期的に見直し、万が一の訴訟費用や損害賠償に備える重層的なセーフティネットが不可欠です。