主人公・芦原泰良を演じた柳楽優弥の演技は、もはや演技という言葉すら生ぬるい。劇中、彼はほとんど言葉を発しない。ただ不敵な笑みを浮かべ、獲物を探す獣のように街を徘徊する。カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を史上最年少で受賞した彼が、その圧倒的な眼光と肉体性だけで映画を支配している。
セリフによる説明を極限まで排除したことで、泰良というキャラクターは記号化されることなく、生々しい「自然災害」のような存在としてスクリーンに君臨した。彼がなぜ戦うのか、その答えは誰にもわからない。ただ、彼の拳が空気を切り裂く音だけが、観客の耳に残り続ける。