梅田スカイビルの魅力は、天空のスペクタクルだけではありません。地上から地下へと垂直移動した先に広がるのが、昭和初期のレトロな街並みを忠実に再現した「滝見小路(たきみこうじ)」です。
石畳の路地にオート三輪や赤い丸型ポストが配置されたこの食堂街は、単なるインスタ映えスポットにとどまらず、地元オフィスワーカーや食通に愛される実力店が軒を連ねています。特にランチタイムには、創業以来の名物お好み焼き店「きじ」に行列ができ、だしの利いた大阪の伝統的な味を求める人々で賑わいます。最先端のハイテク建築の真下に、あえて泥臭い昭和の下町情緒を埋め込むというコントラストもまた、建築家・原広司氏が仕掛けた「重層都市」の妙味です。
さらに、タワーイースト3階・4階に位置する「シネ・リーブル梅田」の存在を忘れてはなりません。テアトルシネマグループが運営するこの映画館は、関西屈指の独立系・アート系作品の上映拠点として映画ファンから熱狂的な支持を集めています。独自の上映企画や音響設備へのこだわりは定評があり、「空中庭園で夕景を眺め、地下で一杯傾け、夜はミニシアターで良質な映画に浸る」という、文化的な回遊ルートが1つのビル内で完結しています。
なお、冬の風物詩として長年親しまれてきたクリスマスイベントの経緯についても触れておく必要があります。かつてドイツ総領事館の後援のもとで開催されていた「ドイツ・クリスマスマーケット大阪」は、本場のヒュッテ(木造小屋)やアンティークのメリーゴーランドが並び、冬の梅田の代名詞でした。惜しまれつつ休止した後は、最新のライティング技術を駆使した光のツリー演出や国内クラフトマーケットを取り入れたイルミネーションイベントへと形を変え、時代に即した新たな冬の情緒を紡ぎ出しています。