そもそも、人間を「白人(コーカソイド)」「黄色人種(モンゴロイド)」「黒人(ネグロイド)」といった固定的な枠組みで分類する手法は、18世紀後半にドイツの解剖学者ブルーメンバッハらが提唱した骨格測定などに端を発する。当時はそれが最先端の科学とされたが、そこには多分に植民地主義的な優劣思想やバイアスが混入していた。
現代の分子人類学において、これらの言葉はもはや有効な科学的カテゴリーとしては機能していない。人間の遺伝的変異の85%以上は、同じ「人種」とされる集団の内部に存在し、集団間の差異は極めてわずかだからだ。見た目の特徴(肌の色や髪の質)を決定づける遺伝子は、ゲノム全体のほんの一部に過ぎず、人類の深層的な歴史を語るにはあまりにも情報不足なのである。