蹴鞠(けまり/しゅうきく)とは、古くは古代中国から渡来し、日本で独自の美意識と作法によって洗練された伝統的な球技です。その核心を端的に表すならば、「複数人で円陣を組み、1つの球を地に落とすことなく蹴り続け、その優雅さと継続回数を追求する協調的遊戯」と言えます。
一般的な球技のようにゴールもなければ、相手からボールを強奪するディフェンスも存在しません。勝者と敗者を峻別するスコアボードはなく、競技者全員が一つのチームとなって調和を目指します。試合場となるのは「鞠庭(まりにわ)」と呼ばれる約14メートル四方(約7間四方)の平坦な広場です。その四隅には「懸(かかり)の木」と呼ばれる4本の樹木(松・桜・柳・楓)が植えられ、四方の神々への敬意と四季の移ろいを象徴しています。
基本的なプレースタイルは、8名(状況により6名または4名)の「鞠足」が定位置に立ち、右足のみを使って鞠を宙に浮かせ続けます。蹴り上げる高さはおよそ3メートルから4メートル。高すぎても低すぎても相手が打ちにくくなるため、受け手の胸元へ吸い込まれるような放物線を描くことが最高の技量とみなされます。「己の身体を制御し、他者に尽くす」という利他の所作こそが、蹴鞠の本質なのです。