育児界隈で広く信じられている俗説の代表例が、「背中スイッチ」と呼ばれる現象です。「抱っこで熟睡したのを確認してベッドに降ろした瞬間、背中にあるセンサーが作動して目を覚ます」と例えられますが、背中に物理的な覚醒スイッチが存在するわけではありません。
小児理学療法の視点から解明されている真の原因は、体位変換による背骨のCカーブの喪失と、敷布団との接触時に生じる温度差です。子宮内にいた頃の胎児は、背中を丸めたC字型の姿勢を保っていました。平らで硬いマットレスに置かれると背骨が急激に伸展し、身体が浮いたような強い落下感(不安感)が生じてモロー反射が誘発されます。さらに、親の温かい体温(36度台後半)から急に冷たいシーツへ移動させられる皮膚刺激が、自律神経を刺激して目覚めを促してしまうのです。
もう一つの見落とされがちな盲点が、新生児のガスだまりとゲップ不足です。「授乳後に背中をトントンして1回ゲップが出たから安心」と考えて水平に寝かせると、胃の奥に残っていた微小な気泡が腸へと流れ込み、腸管を押し広げて痛みを引き起こします。大人と異なり胃の形状が徳利のようにまっすぐな乳児は、わずかな胃圧の上昇でも胃酸の逆流感を伴い、胸や喉の違和感から身をよじって暴れる原因になります。