生活の基盤となるパーソナルセキュリティにおいて、オーストラリアとアメリカの治安の違いと最新状況は、渡航先を決める上で妥協できない決定打となります。
オーストラリアは1996年のタスマン半島ポートアーサー事件を契機に、世界で最も厳格な銃規制法を導入しました。自動・半自動小銃の民間所持は完全に禁止され、市中で銃犯罪に巻き込まれるリスクは統計学的に極小です。オーストラリア連邦警察の犯罪データによると、人口10万人あたりの殺人発生率は0.8〜0.9件と日本(約0.3件)に近い安全圏を維持しています。夜間に主要都市のトラムや電車を利用する際も、基本的な警戒心を払っていれば女性の単独移動が可能です。
一方のアメリカでは、FBIの全米統一犯罪報告(UCR)によると、人口10万人あたりの殺人発生率が依然として6件台で高止まりしています。2024年から2026年にかけても全米各地で銃乱射事件が日常的に報道されており、どれほど治安が良いとされる高級住宅街や大学キャンパスであっても、一歩ブロックを誤れば強盗や薬物中毒者が徘徊するスキッド・ロウのようなエリアに迷い込むリスクを常に孕んでいます。「安全は無料ではなく、相応のコストを支払って買い取るもの」というアメリカ社会の冷徹な前提は揺らいでいません。
この安全性の差は、海外医療保険と医療費負担の比較にも直結します。アメリカは先進国で唯一、国民皆保険制度を持たない国です。民間の医療保険に加入していても免責額(自己負担金)が高額に設定されている場合が多く、盲腸の手術で入院すれば3万〜5万ドル(約450万〜750万円)、救急車の出動だけで1,500〜3,000ドルの請求書が届く事例は枚挙にいとまがありません。保険会社による保険金支払いの拒絶(クレイム却下)を巡るトラブルは日常茶飯事です。
一方、オーストラリアには「メディケア」という公的国民皆保険が存在します。留学生はビザ条件として「OSHC(留学生健康保険)」、ワーキングホリデーや就労ビザ滞在者は「OVHC(海外ビザ保持者保険)」への加入が義務付けられており、全額自己負担となる民間無保険のアメリカに比べ、医療アクセス時の経済的破綻リスクは圧倒的に低く抑えられています。