本作最大の謎として読者の胸を締め付け続けているのが、「なぜ兄である普は、実の弟であるつかさを自らの手で殺害したのか」という死亡理由の真相です。
生前の中学生時代、普は体中に原因不明の傷や痣を無数に作っており、担任教師であった土籠(現・七不思議五番目)からも深く心配されていました。普はその怪我の理由を「自分が転んだだけ」と頑なに隠し続けましたが、読者の間では「つかさから日常的な家庭内暴力や虐待を受けていたのではないか」という見方が有力視されてきました。
1969年、人類が月へ到達したその年、普は理科室の包丁を持ち出し、つかさを刺殺します。その直後、普自身も自ら命を絶ちました。この痛ましい事件の背景には、単なる兄弟喧嘩や突発的な衝動殺人では片付けられない、以下の複合的な要因が存在します。
第一に、中身が怪異へと変貌したつかさによる、周囲の人間を壊していく狂気を止めるための「防衛」です。つかさは悪意を持たず、純粋な好意や好奇心から他者を精神的・肉体的に損壊させる行動を繰り返していました。第二に、普がつかさの「正体」に気付き、自分の病気が治った代償として弟が怪物に成り果ててしまったという、耐え難い罪悪感に押し潰されたことです。
さらに原作が進むにつれ、花子くん(普)自身の「依代」が、他ならぬ弟の「つかさ」であるという戦慄の事実が浮き彫りになりました。七不思議の依代は、それぞれの怪異にとって「最も大切で、二度と手放したくない想いが宿る対象」に貼り付けられます。普にとって、自らの手で命を奪ってなお手放せない唯一無二の存在こそがつかさであり、殺害という行為そのものが、歪みきった愛憎と贖罪の結末であったことを物語っています。