「同じイオンの看板を掲げているのに、どうして専門店街は食品売場と一緒に開けてくれないのか」という疑問は、利用者の間で長年囁かれ続けてきました。検索市場でも「イオン営業時間朝何時から」「イオン営業時間何時まで」という問いが絶えない背景には、このフロア間の非対称性があります。この時間差が生じる背景には、単なる慣行ではなく、緻密な商業計算と流通構造の力学が存在します。
第一の理由は、生活行動パターンの根本的な違いです。食品スーパーは地域住民にとっての「巨大な台所」であり、朝食の買い忘れ、子どもの弁当の材料、出勤途中の飲料や惣菜購入など、朝7時台から8時台にかけて切実な購買需要が立ち上がります。一方で、アパレル・服飾雑貨・書店・カルチャー教室といった専門店街のアイテムは「目的買い」または「余暇消費」であり、平日の午前9時前に洋服やアクセサリーを買い求める生活者はほとんど存在しません。
第二の決定的な理由が、イオンモール短縮営業理由の核心でもあるテナント側の採算性と労働力問題です。大型モールに出店するテナント企業の多くは、正社員1〜2名と複数名のパート・アルバイトで店舗を回しています。もし食品フロアに合わせて朝8時から夜22時までフルオープンを義務付けられれば、2交代制どころか3交代制のシフト構築が必要となり、人件費が爆発的に跳ね上がります。
大手アパレル企業の関係者は、業界の取材に対して次のように現場の窮状を吐露しています。「かつてはデベロッパーの意向に従い長時間の営業に付き合っていたが、午前中やレイトタイムの来店客数は片手で数えるほど。売上が立たない時間帯に従業員を張り付けるコストはもはや維持できない」。2024年問題以降の流通業界全体の働き方改革を経て、2026年現在はイオン側もテナントの無理な拘束を是正し、実利に即した「10時開店・平日20時閉店」といった柔軟な営業ダイヤを承認する方針へ舵を切っています。