急性呼吸不全として救急外来やICUに運び込まれる肺水腫患者の現場では、1分1秒を争うモニタリングが行われます。病棟看護や在宅医療において、医療従事者が厳格に注視する観察項目は以下の通りです。
第一に、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)と呼吸数の急変です。酸素化の悪化だけでなく、呼吸数が毎分25回を超えるような頻呼吸や努力呼吸(肩呼吸、陥没呼吸)は、呼吸筋疲労による心肺停止の前兆となり得ます。第二に、尿量の厳密な把握です。利尿薬投与後に十分な尿排出が得られているかを確認し、循環血漿量の適正化を追跡します。さらに、意識レベルの変容(低酸素や高二酸化炭素血症による不穏・傾眠)を見落とさないことが救命の鉄則です。
気になる肺水腫の致死率と余命について、多施設共同の循環器疾患レジストリ等のデータによると、急性心原性肺水腫を発症した患者の入院期死亡率はおよそ5〜10%と報告されています。迅速な薬物療法と非侵襲的陽圧換気の進歩により急性期の救命率は向上しているものの、退院後の1年死亡率は約15〜20%、5年生存率では重症心不全患者で50%前後に留まるなど、依然として長期予後は厳しい現実があります。肺水腫そのものは適切な救急処置で改善可能ですが、その背景にある心臓や肺の基礎疾患をいかにコントロールできるかが真の余命を決定づけます。