名古屋名物として全国に知れ渡る手羽先唐揚げですが、その元祖を名乗る存在こそが風来坊です。創業者・大坪重男氏が昭和38年(1963年)、当時スープの出汁ガラとして廃棄処分されることが多かった手羽先に目をつけ、独自のタレと調理法で看板メニューへと昇華させたのが始まりでした。
全国展開を進めた競合「世界の山ちゃん」との差異について、旅行者や転勤族の間ではしばしば議論が巻き起こります。結論から言えば、目指している味のベクトルと利用シーンが明確に異なります。両者の方向性の違いを正確に理解しておくことは、名古屋の手羽先文化を堪能するうえで欠かせない知識です。
風来坊と世界の山ちゃんの違いを比較すると、風来坊の真骨頂は「秘伝の熟成甘辛タレ・香ばしい炒り胡麻・厳選された特製スパイス」の三位一体による重層的な旨味にあります。外皮をカリッと二度揚げしつつ、骨まわりの肉質は極めてジューシーでふっくらと保たれている点が特徴です。対して世界の山ちゃんは、ガツンと刺激的な白コショウ主体のスパイシーさを全面に出し、ビールをハイピッチで流し込ませるハードな設計となっています。
地元名古屋の古くからの愛好家が「日常的に飽きずに食べ続けられるのは風来坊のタレの深み」と口を揃える背景には、半世紀以上にわたって調整され続けてきたタレのコクと、肉の水分を逃さない緻密な調理技術があります。伏見駅店でもこの伝統製法が厳格に守られており、1人で2人前〜3人前(10〜15本)を平らげる常連客の姿が日常的に見受けられます。