旅行レビューやSNSにおいて、小樽ステンドグラス美術館のネットの反応を分析すると、「写真で見る以上の没入感がある」「入った瞬間に鳥肌が立った」といった感動の声が目立ちます。なぜこれほどまでに来館者の心を打つのでしょうか。その最大の理由は、「本物の宗教建築美術」と「小樽が誇る大正モダンの産業遺産」が完璧な調和を遂げている点にあります。
館内に展示されているステンドグラスは、単なる観賞用の装飾品ではありません。19世紀後半から20世紀初頭にかけてイギリスで制作され、実際に現地の国教会やチャペルの窓を彩っていた本物の美術品です。イギリス国内での産業構造の激変や都市再開発、第二次世界大戦の戦火、そして近年の教区再編などにより、取り壊しの危機に瀕していた貴重なガラス工芸の数々を、ニトリが散逸を防ぐ目的で体系的に収集・保全しました。
その重厚な名作を受け止める舞台となっているのが、1923年(大正12年)に建てられた木骨石造の「旧高橋倉庫」および「旧荒田商会」です。小樽芸術村の旧高橋倉庫の歴史を紐解くと、かつて日本海交易で栄えた小樽港の大豆や小豆を保管する営業用倉庫として機能していました。堂々たるクイーンポストトラス(対束小屋組)の木造軸組と、外壁の小樽軟石が織りなす空間は、天井が高く外光が遮断されています。ほの暗い倉庫内に浮かび上がるバックライトの柔らかな光と、パイプオルガンの荘厳な音色が重なり合うことで、まるで100年前の英国大聖堂に迷い込んだかのような圧倒的没入空間が生み出されているのです。