近江商人の町並みが放つ独特の美しさは、華美な装飾を誇るのではなく、質素倹約と実用性を重んじた「用の美」に根ざしています。「売り手よし、買い手よし、世間よし」という三方よしの精神と歴史は、現代の企業の社会的責任(CSR)やSDGsの先駆けとしても再評価されています。
商人たちは全国へ行商に出て巨万の富を築きながらも、郷里においては決して富を誇示せず、質素な暮らしを守り続けました。その一方で、道路や橋の修繕、寺社への寄進、飢饉の際の施しなど、公共のために惜しみなく私財を投じています。この「陰徳善事」の姿勢が、今に残る端正で落ち着いた町並みの礎となっています。
現在、これらの町並みは文化財保護法に基づく重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定され、住民と自治体が一体となって保存活動を継続しています。近江商人 由来と現在をつなぐ景観保全の取り組みこそが、訪問者に本物の歴史的奥行きを感じさせる最大の要因です。