こうした銭湯人気を後押ししたのは、メディアを通じた文化の再発見でもある。小山薫堂が提唱し、日本人の精神性と入浴の深淵を描いた映画『湯道』の公開は、人々の足をお風呂屋へと向かわせる大きな契機となった。湯を愛で、湯に感謝するという思想は、銭湯を単なる「体を洗う場所」から「心の調律所」へと引き戻した。
さらに、Netflixで配信された『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』や、Amazon Prime Videoでの各種銭湯ドキュメンタリーを通じて、入浴文化の特異な美しさは海外の視聴者やデジタルネイティブ層にも広く届いた。画面越しに見たあの湯気の温もりを求め、神楽坂を歩く観光客が第三玉乃湯の引き戸に手をかける姿は、もはや日常的な風景となったのだ。