1966年5月の番組第1回放送から半世紀にわたり『笑点』を支えた歌丸師匠は、2016年5月22日の生放送(第2515回)をもって大喜利司会者を勇退しました。降板理由について、当時は「体力的な限界」とシンプルに語られましたが、その裏には極めて論理的かつ厳格な芸人としての美学が存在していました。
勇退直前の2015年頃から、腸閉塞や肺炎による入退院が頻発。番組収録の合間に楽屋で横になり、点滴を打ちながら本番に臨むことも常態化していました。自著や特番のロングインタビューにおいて、師匠は次のような告白を残しています。「大喜利の司会というのは、回答者の答えを瞬時に拾って、機転の利いたツッコミで倍にして返さなければいけない。しかし、息が苦しくて頭の回転が一瞬でも鈍ると、間(ま)が狂ってしまう。間が狂った司会を茶の間に見せるのは、お客様に対しても、命懸けで答えを出してくるメンバーに対しても失礼極まりない」。
番組のテンポとクオリティを死守するため、自ら身を引くという決断を下したのです。勇退後は「終身名誉司会」に就任し、後任司会者となった直系の後輩・春風亭昇太に温かいエールを送り続けました。