龐煖という圧倒的怪物が『キングダム』の物語に刻みつけた傷跡は計り知れません。作中における代表的な名将たちとの激突は、いずれも作品史に残る名場面として語り継がれています。
【王騎との因縁(馬陽の戦い/単行本16巻)】
かつて自らが討ち取った六大将軍・摎(きょう)の仇として激突した王騎との一騎打ち。武力において龐煖を完全に圧倒していた王騎でしたが、趙軍の軍師・李牧の張り巡らせた策と、中華十弓・魏加の放った不意打ちの矢によって隙が生じ、龐煖の矛が王騎を貫く結果となりました。勝利を収めながらも「精神的には王騎に完全に敗北していた」という拭い去れない劣等感が、龐煖をさらなる狂気へと駆り立てる契機となります。
【麃公との死闘(合従軍編/単行本30巻)】
秦国の喉元・蕞(さい)へ迫る趙軍を迎え撃った大将軍・麃公。龐煖の腕をへし折りながらも力尽きた麃公は、最期に「童 信、前進じゃァ」と言い遺し、龐煖に対して「貴様はただの巨大な子供にすぎん」という決定的な本質を突きつけました。
【李牧との奇妙な関係性】
龐煖は趙国の最高司令官である三大天の称号を与えられていましたが、国家への忠誠心は皆無でした。李牧は龐煖を「荒ぶる神の力」として軍略に組み込み、龐煖は李牧を「自らの道を証明するための強敵と巡り合わせてくれる案内人」として利用していました。互いの目的のために利用し合いながらも、精神的な深淵で結びついていた両者の関係は、合理的な軍師と非合理な武神という極めて特異な共依存関係だったと分析できます。