一方で、過熱するブームの中では「完全にどんな曲でも無条件に合う」という神話が独り歩きしている側面も見逃せません。実態を冷静に検証すると、このダンスが決して適合しない「明確な境界線」が存在します。
第一の盲点は、拍子の壁です。「何にでも合うダンス」のステップは基本的に4分の4拍子(偶数拍)を前提として組まれています。そのため、ワルツに代表される4分の3拍子や、プログレッシブ・ロックに見られる変拍子(5拍子や7拍子など)に合わせると、ステップの開始点と小節の頭が毎小節ごとにずれていき、激しいリズムの破綻を引き起こします。
第二の盲点は、比較動画制作者による意図的な微調整です。ネット上で「奇跡の一致」として称賛されているバイラル動画の中には、投稿者が動画編集ソフト上で映像を数パーセントだけタイムストレッチ(速度微調整)したり、小節の切れ目で1〜2フレームのカットを挿入してサビの頭を強制的に同期させているケースが少なくありません。この技術的なカラクリを知らずに生演奏や無編集の音源と重ねると、「思ったより合わない」という現実に直面することになります。