スキルス胃がんで完治した人は実在するのか――。医学的な結論から述べれば、病勢が完全に消失し、再発なく5年〜10年以上社会復帰している長期生存者は確実に存在します。がん医療では再発リスクを考慮して「完治」の代わりに「寛解(がんの兆候が見られなくなった状態)」という言葉が用いられますが、治療から5年を超えて再発が見られない状態を維持し、実質的な治癒に至っているケースは臨床現場で毎年積み上がっています。
一般的な胃がんと比較してスキルス胃がんが難治とされる背景には、その特異な増殖様式があります。胃の粘膜表面に病巣を作る通常の胃がんと異なり、スキルス胃がんは粘膜の下の胃壁全体に染み込むように広がる「硬質がん(びまん性胃がん)」です。そのため初期病変が見つけにくく、発見時には進行期に達している割合が高いという特徴を持ちます。
全国がんセンター等の集計データによると、胃がん全体の5年生存率は約70%前後であるのに対し、スキルス胃がん全体の5年生存率は20%〜30%台と依然として厳しい数字を示しています。しかし、この統計値はステージ1からステージ4までの全症例を包括した数値です。早期に切除できた場合の生存率は60%を超え、さらに進行期であっても新しい治療プロトコルによって生存曲線は着実に上向きへと変化しています。