1986年6月22日、メキシコ・エスタディオ・アステカで開催された1986年W杯イングランド戦準々決勝。後半6分、スコアレスで迎えた場面で事件は起きました。イングランド守備陣のクリアミスが高く浮き上がった瞬間、ペナルティエリア内に侵入したディエゴ・マラドーナが、名手ピーター・シルトンと激突しながらボールをゴールネットへ押し込みます。
身長165cmのマラドーナが185cmのシルトンに競り勝つことは物理的に不可能に見えましたが、ボールはイングランドゴールへ吸い込まれました。イングランドの選手たちが猛烈にハンドをアピールするなか、チュニジア人主審のアリ・ビン・ナセル氏は毅然としてゴールを宣告します。
このマラドーナ神の手真相における最大の要因は、神の手審判の死角理由にありました。主審はペナルティエリア外側からプレーを追っており、マラドーナの背中越しにシルトンを見るアングルとなっていたため、ボールと手の接触点を直接視認できませんでした。さらに、ブルガリア人の線審ボグダン・ドチェフ氏も逆サイドのタッチライン際におり、選手同士の体が重なって決定的瞬間を捉えられなかったのです。
マラドーナ自身は頭を突き出しながら、頭部の真横に絶妙に左拳を添えてボールを叩いていました。ヘディングのモーションと完全に同調させたこの神業とも言えるトリックが、審判団の目を欺く決定打となったのです。試合後の記者会見でマラドーナが放った「マラドーナの頭が少し、神の手が少し触れた」という名言により、このプレーは永遠にサッカー神の手ゴールとして歴史に刻まれました。