長年タブー視されてきた「昇進の裏側」に、いま新たなメスが入りつつある。内規に記された「大関で二場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」という文言。だが実際には、数字に表れない選考基準が幾重にも張り巡らされている。
関係者への取材で見えてきたのは、日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会(横審)内部における評価軸の劇的な変化だ。単なる勝率だけでなく、土俵上での立ち振る舞い、取組後の態度、さらには日々の言動に至るまでの「品格・力量」がかつてない厳格さで査定されている。ある親方は匿名を条件にこう明かした。「勝ち星さえ積めば上がれた時代は終わった。現代の綱には、土俵を降りた後の発信力や社会的な模範としての立ち居振る舞いまで、無言の重圧としてのしかかっている」。頂点に到達した者だけが見る景色は、栄光と孤独が織りなす極限の心理戦でもある。