園内には、茅葺き屋根の古民家や板張りの東屋が点在し、それらがまるで最初からそこにあったかのように自然と融和している。この類まれな空間を約半世紀前に切り拓いたのが、創業者である寺谷節子氏だ。
高度経済成長の影で過疎化が進む故郷に危機感を覚えた寺谷氏は、荒れ果てていた杉山を自らの手で整備し、村の女性たちと共に野山に自生する草木を摘み集め始めた。何か特別な観光資源を外から持ち込むのではなく、足元に眠る「何もない贅沢」を掘り起こすこと。彼女の揺るぎない哲学は、今や半世紀の歳月を経て、大樹の根のように智頭の土壌へ深く根づいている。
「自然をねじ曲げず、季節の巡りに人間が合わせる」。園内に漂う凛とした空気は、彼女が長年守り続けてきた土着の美意識そのものだ。