メディアで頻繁に取り上げられる華やかなご当地グルメと、地域住民が日常的に愛好するメニューの間には、どのような意識の差があるのでしょうか。大手ポータルやSNS調査における岡山ソウルフードランキングと、現場における岡山グルメ地元民の反応を照らし合わせると、興味深い構造が見えてきます。
その象徴が「岡山ばら寿司」です。岡山ばら寿司の歴史は江戸時代初期、備前岡山藩の初代藩主・池田光政が発令した「食膳は一汁一菜とする」という倹約令に端を発します。これに対し、贅沢を禁じられた庶民が「ご飯の上に魚や野菜など多数の具材を乗せても、器の中に入っていれば一菜である」と機転を利かせたことが始まりでした。しかし現代の地元住民にとっては、「ハレの日の仕出しや法事、祖母が作る特別な料理」という位置付けが強く、普段の昼食に食べる感覚とは異なります。
日常の食事において地元民がリアルに選んでいるのは、やはり街角のうどん店(岡山は隠れたうどん王国でもあります)や、前述のキムラヤのパン、そして手頃な価格帯のえびめしや中華そばです。「観光客が並ぶ有名デミカツ丼店には普段あまり行かないが、地元の老舗喫茶店で食べるえびめしや定食屋のラーメンカツ丼セットは無性に恋しくなる」という声が、ネットコミュニティや知恵袋の投稿でも大多数を占めています。