仏師界の二大巨頭、運慶と快慶。彼らが率いる慶派一門がこの巨像二体を完成させるまでに要した期間は、わずか69日間にすぎない。通常であれば数年を費やす規模の仏教彫刻を、なぜ二ヶ月あまりで仕上げることができたのか。古文書に残るこの記録は、長年「誇張ではないか」と疑問視されてきた。
しかし今回の構造解析は、記録の正しさを裏付けた。巨像は一本の巨木から彫り出されたものではなく、緻密にプレカットされた数百に及ぶ部材を組み合わせる「寄木造(よせぎづくり)」の最高到達点だったのだ。運慶が全体のプロポーション設計とダイナミックな骨格形成を統括し、快慶が衣の襞や筋組織、緻密な表面仕上げを指揮した。互いの工房組織を高度に分業化させ、ベルトコンベアにも似たライン体制を現場の足場上に構築していたことが、木組みの継手構造から判明している。
互いの美学をぶつけ合いながら火花を散らした二人の天才。運慶の荒々しいまでの生命感と、快慶の理知的な美意識。二つの才能が融合したことで、奇跡的なスピードと美術的極致が同時に達成された。