1984年の『時間の国のアリス』以降、呉田軽穂名義での楽曲提供は一時途絶えていましたが、2015年に歴史的な再会が実現します。デビュー35周年を迎えた松田聖子のために、作詞・松本隆、作曲・呉田軽穂、編曲・松任谷正隆という黄金トリオが31年ぶりに集結し、『永遠のもっと果てまで』がリリースされました。
この楽曲は映画『PAN ネバーランド、夢のはじまり』の日本語版主題歌に起用され、大人になったふたりの成熟した音楽性が結実した名曲として話題を呼びました。レコーディング現場では旧知の仲間として温かい笑顔が交わされ、ブランクを一切感じさせない呼吸の一致を見せたと伝えられています。
さらに、NHK紅白歌合戦などの大型音楽番組の舞台裏でも、ふたりが親しく言葉を交わす姿が度々報じられています。同じ時代をトップランナーとして駆け抜け、酸いも甘いも噛み分けた表現者同士にしか分からない「戦友」としての絆が、現在の穏やかな親交を支えています。
【プロの結論】昭和歌謡からJ-POPへ|二人が日本の音楽シーンに変革を起こした構造的理由
松田聖子と松任谷由実の関係性を音楽社会学の視点から分析すると、単なる「歌手と作曲家」を超えた構造的な重要性が見えてきます。
当時、分業制が当たり前だった歌謡界に、自作自演をアイデンティティとするニューミュージックの作家が介入したことは、昭和のアイドルカルチャーに革命をもたらしました。職業作詞家・作曲家による予定調和を壊し、アーティストの感性をアイドルの歌唱力に乗せて発信するハイブリッドな制作手法は、その後の90年代J-POP黄金期の礎を築いたのです。
自分の領域に対する絶対的なプロフェッショナリズムを持ちながら、他者の卓越した才能を受け入れ、化学反応を起こす。この柔軟なクリエイティビティこそが、時代を超えてふたりがトップランナーであり続ける最大の理由といえます。