日本全国の消費者が慣れ親しんでいる現行のロッテ コーポレートシンボルは、1993年4月に導入されました。このシンボルマークを手掛けたロッテロゴ デザイナーこそ、アメリカのデザイン界を代表する巨匠ソール・バス(Saul Bass, 1920–1996)です。映画ファンであれば、ヒッチコック監督の『めまい』や『サイコ』、あるいはスタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』における革新的なタイトルシーケンスの生みの親としてその名を知らない者はいません。
ソール・バスは映画界にとどまらず、味の素、コーセー、ミノルタ、さらには米AT&Tやユナイテッド航空など、日米を代表する大企業のCIを次々と手掛けたコーポレートブランディングのパイオニアでもありました。ロッテが創業45周年を迎えた1990年代初頭、単なる製菓メーカーの枠を脱し、人々の生活に潤いを与える総合グループへと飛躍するタイミングで、バスへの依頼が決断されました。
彼が提示したロッテロゴの意味と由来の核心は、頭文字である「L」の文字を極限までシンプルに、かつ生命力あふれる造形で再解釈することにありました。3本のしなやかなストライプで構成されたこの造形は、硬直した企業の権威主義を完全に排除しています。バスは当時の制作意図において「親しみやすさ、温かさ、そして消費者の心と弾むように共鳴する人間的な息づかい」を追求したと伝えられています。幾何学的な均一性を持たせながらも、手描きのぬくもりを感じさせる柔らかな曲線が、菓子の持つ幸福感と見事に調和しています。