「情弱(じょうじゃく)」とは、元来「情報弱者」の略称です。公的な社会保障や福祉の分野では、地理的な理由(インターネット回線が届かない山間部など)や身体的制約、あるいは経済的な事情によって情報通信技術(ICT)の恩恵を十分に享受できない人々を指す中立的な行政用語として用いられてきました。これは、いわゆる「デジタルデバイド(情報格差)」の文脈で語られる弱者救済の対象でした。
しかし、Weblio辞書やWiktionaryなどの言葉の変遷史にも記録されている通り、インターネット掲示板やSNSが発展する過程で、この言葉の意味合いは大きく変質しました。現在広く使われている「情弱」は、端末や通信環境を所有しているにもかかわらず、自発的に検索・精査を行わず、真偽不明の情報を鵜呑みにして不利益を被る人物を嘲笑・揶揄する蔑称としてのニュアンスを強く帯びています。「検索すれば1分でわかる初歩的な質問を掲示板でする人」や、「怪しいインフルエンサーの誇大広告に飛びついて大金を失う人」が典型例として語られます。
よく混同される言葉に「脆弱(ぜいじゃく)」がありますが、脆弱がシステムや構造の「もろさ・壊れやすさ」を客観的に表すのに対し、情弱は「主体的な情報処理能力・リテラシーの不足」に焦点を当てた主観的・評価的な言葉です。2026年の今日において情弱であることは、単なるネットの不慣れを意味するのではなく、日々の可処分所得や将来の資産形成において構造的な不利益を甘受させられる重大なリスク要因となっています。