長年、父・猿翁との間に埋まらない溝を抱えていた香川照之ですが、転機となったのは2011年のことでした。当時45歳だった香川は、俳優としての地位を確立していながらも、長男・政明(現・市川團子)に澤瀉屋の血統を継がせる決意を固め、九代目市川中車を襲名して歌舞伎界へ異例の挑戦を果たします。
この前代未聞の挑戦を誰よりも歓迎し、梨園の厚い壁から香川親子を守り抜いたのが、いとこの市川猿之助でした。猿之助は香川の襲名興行で共演を重ね、門外漢と揶揄されがちだった香川の稽古に付き添い、舞台上での立ち居振る舞いを徹底的に指南しました。
香川もまた、猿之助が座頭を務める舞台を映像・演劇の両面から全力でバックアップし、二人は単なるいとこを超えた「戦友」として澤瀉屋を牽引していったのです。