物語の主人公は、中学校に進学して間もなく、教室の空気や人間関係に息苦しさを感じて登校できなくなった少女・まい。身体的な不調を訴えて部屋に閉じこもりがちになった彼女を見かねた母親は、ある提案をします。それは、森の中で一人暮らしをしている母方の祖母の家に、しばらく預けることでした。
祖母は、かつてイギリスから日本へ嫁いできた英国人。周囲の山里の村人たちからは親しみを込めて「西の魔女」と呼ばれていました。まいは、深い森に囲まれた古風な日本家屋で、おばあちゃんとの二人暮らしをスタートさせます。
そこにあったのは、都会の学校のような過密なスケジュールや他人からの無言の同調圧力とは無縁の、どこまでも穏やかで丁寧な生活でした。朝露に濡れた庭でハーブを摘み、裏山の野イチゴを集めて銅鍋でコトコトとジャムを煮る。庭に咲くラベンダーの茂みの上にシーツを広げて干し、太陽と草の香りを布地に移す——。傷つき、こわばっていたまいの心は、おばあちゃんの手料理と温かなまなざしに包まれる中で、少しずつ解きほぐされていきます。