神戸・元町駅から南へ数分、セレクトショップやギャラリーが点在する乙仲通の界隈に位置するこの店には、遠方からの旅行者だけでなく地元のクリエイターや常連客が絶え間なく足を運びます。同店が単なる「写真映えスポット」にとどまらず、長年にわたり圧倒的な支持を集める背景には、空間デザインと時間の流れに対する徹底した美学が存在します。
社会学者のレイ・オルデンバーグが提唱した「サードプレイス(家庭でも職場でもない第3の居場所)」の概念において、優れたカフェは個人の精神的な回復拠点として機能するとされます。cafe&bar anthemの店内は、席の間隔がゆったりと確保され、過度な装飾を排した引き算の美学で統一されています。カトラリーの触れ合うかすかな音や、店内に流れる落ち着いた音楽が心地よいホワイトノイズとなり、他者の視線を気にせず自分自身の思索や読書に没頭できる「内省的なサンクチュアリ」として機能しているのです。
無機質なコンクリートと温かみのある木製家具のコントラスト、時折揺れるキャンドルの灯りなど、細部に至るまで計算された空間演出が、日常のストレスから解放されたい都市生活者の心を掴んで離しません。