伊藤歩という稀有な表現者を語る上で、岩井俊二監督の手による金字塔『スワロウテイル』を外すことはできない。わずか十代半ばで演じたアゲハ役は、無垢と混沌が交錯する架空の街「円都(イェン・タウン)」の空気感を一身に背負い、日本アカデミー賞新人俳優賞および優秀助演女優賞をさらった。
あの頃からすでに、彼女の顔立ちには大人びた骨格の美しさと、脆く壊れそうな少女の危うさが同居していた。時代が移り変わっても色褪せないそのイノセンスは、いまなお多くのクリエイターを惹きつけてやまない。彼女に似ているとされる女優たちが一様に「唯一無二の透明感」と評されるのも、原点にあるこの衝撃的な映像美が無意識に基準となっているからだろう。