ネット上の情報やSNSでは、初穂料の準備や作法に関して誤った俗説が拡散されているケースが少なくありません。ここでは、参拝当日に恥をかかないための実用的な盲点と誤解を是正します。
真っ先に解消すべきは「のし袋がない場合、お金をそのまま財布から出して渡しても良いのか」という疑問です。結論から言えば、現金をそのまま手渡しするのは重大なマナー違反にあたります。神社は商業施設ではなく、神様へ供える現金を「裸のまま」扱うことは不敬とみなされます。万が一のし袋を用意できなかった場合でも、無地の「白い封筒(郵便番号枠のないもの)」を用意し、表面に「御初穂料」と記入して包むのが最低限のエチケットです。
また、戌の日初穂料渡し方のマナーとして、渡し方の動作にも所作の美しさが問われます。初穂料はバッグから直接のし袋を取り出して渡すのではなく、慶事用の「袱紗(ふくさ)」に包んで持参するのが大人の嗜みです。受付窓口で申込用紙を記入する際、袱紗から手早く取り出し、袱紗を折りたたんで台代わりに敷いた上にのし袋を乗せます。そして、相手(神職や巫女)から見て文字が読める向きに回転させ、「初穂料をお納めください。よろしくお願いいたします」と一礼を添えて両手で差し出すのが最も格調高い作法です。
もう一つの決定的な盲点は、「神社」と「お寺」の区別です。安産祈願として全国的に有名な寺社の中には、水天宮や産泰神社のような「神社(神道)」だけでなく、中山寺(兵庫県)や大本山護国寺(東京都)のような「寺院(仏教)」も多数存在します。お寺で祈願を受ける場合、表書きに「初穂料」と書くのは本来誤りです。初穂は神道の神へ新米を捧げる概念に基づく言葉であるため、寺院では「御布施(おふせ)」または「御祈祷料(ごきとうりょう)」と表書きするのが仏教の教義に沿った正しいマナーとなります。