隅肉溶接とは?突合せ溶接との違いや強度計算・記号の基本を徹底解剖

隅肉溶接とは?突合せ溶接との違いや強度計算・記号の基本を徹底解剖

隅肉溶接とは?突合せ溶接との違いや強度計算・記号の基本を徹底解剖についての最新情報をご紹介します。

隅肉溶接の構造計算を司る根幹概念が「脚長(きゃくちょう:S)」と「のど厚(のどあつ:a)」です。両者の幾何学的な関係を正しく認識することは、過小設計による破断事故や、過剰溶接による母材の熱歪みを未然に防ぐ生命線となります。

直角に交わる母材に対し、二等辺三角形のビードを形成する「等脚隅肉溶接」において、底辺および高さに相当する寸法が脚長($S$)です。そして、強度の支配断面となるのが、溶接ルート部からビード表面までの最短距離である「理論のど厚($a$)」です。直角二等辺三角形の幾何関係から、理論のど厚は以下の数式で導き出されます。

$$a = S \times \cos 45^\circ = \frac{S}{\sqrt{2}} \approx 0.707S$$

実務設計では簡便に「有効のど厚 = 脚長 × 0.7」として扱われます。ビード表面が盛り上がっている(余盛がある)場合でも、余盛部分は静的強度計算上の耐力としてカウントされません。逆にビード表面が窪んでいる(凹ビード)場合は、実際の最小厚さを実効のど厚として算定しなければなりません。

強度計算の実務においては、接合部に引張荷重が作用しようと曲げモーメントが作用しようと、接合面は「のど断面のせん断破壊」を起こす前提で計算します。有効溶接長を $L$、作用荷重を $P$ としたとき、発生するせん断応力度 $\tau$ は以下の式で求められます。

$$\tau = \frac{P}{a \times L}$$

この $\tau$ が、鋼材の基準強度($F$値)から算出される許容せん断応力度(長期許容応力度 $f_s = F / (1.5 \sqrt{3})$、短期許容応力度 $f_{s\_short} = 1.5 \times f_s$)を下回っていなければなりません。

さらに実務上で見落としてはならないのが「有効溶接長」の減算規定です。アーク溶接の始端(スタート部)と終端(クレーター部)には欠陥が発生しやすく、のど厚が十分に確保できません。そのため、日本建築学会の規準等では、「有効溶接長 = 全溶接長 - 2 × 脚長($2S$)」として計算するのが基本原則となっています。加えて、薄板溶接を除き、熱影響による母材の急冷硬化割れを防ぐ観点から、板厚に応じた「最小サイズ規定(最小脚長)」が厳格に定められています。

橋本 菜々子
著者

橋本 菜々子

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。