「場所は分かったが、ビクとも動かない」「マイナス溝がナメて削れてしまった」――東京都水道局の指定給水装置工事事業者や、年間数千件の出動実績を持つレスキュー業者の現場スタッフに取材を行うと、日常的に放置された止水栓の過酷な現実が浮き彫りになります。
止水栓は何年、時には何十年もの間、一度も動かされないまま湿気の多い水回りに鎮座しています。その結果、水中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が結晶化し、ネジ山に固着する「スケール詰まり」や金属自体のサビ・電食による固着がほぼ確実に発生します。
現場取材で得られた、現場修理スタッフによる証言は極めて示唆的です。
「深夜に水漏れで呼ばれて現場に駆けつけると、住人の方がプライヤーやペンチで無理やり回そうとして、バルブの真鍮シャフトをねじ切ってしまっている現場に何度も遭遇します。器具の止水栓は細い給水管で壁内配管とつながっているため、強い回転トルクを無理にかけると、壁の中のエルボ継ぎ手ごと折れてしまい、壁内噴水という最悪の二次災害に発展するのです」(都内指定水道工事店・現場主任エンジニア談)
インターネット上のQ&AサイトやSNSでも、「ドライバーを金槌で叩いたら配管がグラグラになった」「水が止まるどころか配管の根元から噴き出した」という阿鼻叫喚の失敗談が散見されます。固着したバルブに遭遇した際は、「無理に回さず、直ちに屋外の水道メーター元栓へダッシュする」のが、建物を守る唯一の防衛行動です。