ネット上のマナー解説記事やSNS情報の中には、極端な俗説や誤ったビジネスマナーがさも正解であるかのように流布している事例が散見されます。その代表格が、年賀状や新年のグリーティングカードで頻繁に目にする「賀詞(がし)」の格付けに関する誤解です。
代表的な過誤として挙げられるのが、上司や取引先といった目上の人への正月挨拶マナーにおいて「賀正」や「迎春」を使ってしまうケースです。漢字の成り立ちを紐解くと、これらは単に「正月を祝う」「春を迎える」という事実を告げているに過ぎず、相手に対する敬意の念が含まれていません。目上の人物に対して2文字の賀詞を用いるのは、ビジネスエチケット上、重大な失礼に当たります。
敬意を適切に表現するためには、「謹んで(へりくだって)」を意味する「謹」や、「恭しく(うやうやしく)」を意味する「恭」が入った4文字の賀詞、すなわち謹賀新年や「恭賀新年」を選ばなければなりません。さらに言えば、謹賀新年という賀詞を記載した上で、添え書きに「あけましておめでとうございます」と書く行為は、同一の意味を重ねる「重複表現(二重敬語に類似する悪文)」として文章作法上忌避されます。
また、英語圏の表記に関するネット上の俗説「A Happy New Yearは間違いで、Happy New Yearが正しい」という言説にも補正が必要です。単体で挨拶として叫ぶ場合は無冠詞の「Happy New Year!」が自然ですが、文章中で「I wish you a Happy New Year.」と記述する際には不定冠詞の「a」が文法上絶対に不可欠です。断片的な知識だけで相手の文面を誤りと断定するのは、知的なビジネスパーソンとして慎むべき振る舞いと言えます。