日常会話やフィクション作品では混同されやすい拘置所と刑務所ですが、法律上の根本的な境界線は「刑事責任を問う裁判の判決が確定しているか否か」という点に集約されます。
法務省が管轄する刑事施設の中で、拘置所は主として未決拘禁者(被疑者・被告人)を収容するための施設です。日本の刑事訴訟法において、裁判で有罪が確定するまでは何人であっても「無罪の推定」を受けます。したがって、拘置所への収容は過去の罪に対する罰(刑罰)ではなく、捜査や公判を円滑に進めるため、あるいは逃亡や証拠隠滅(罪証隠滅)を防ぐための「手続き上の身柄確保(勾留)」に過ぎません。
対照的に、刑務所(および少年刑務所)は、裁判によって実刑判決が下され、控訴・上告の期限が切れるなどして判決が確定した既決者(受刑者)を収容する施設です。かつての懲役刑に代表されるように、国家の刑罰権を執行し、受刑者に対して矯正教育や指導を行って社会復帰を促すことが法的な主目的となります。
なお、一般に「豚箱」などの俗称で呼ばれる警察署内の留置場(留置所)は、警察庁・各都道府県警察の管轄下にあります。本来は逮捕直後の取調期間(最長72時間)に身柄を置く施設ですが、全国に点在する拘置所の収容能力の限界から、刑事施設法上の「代用刑事施設」として起訴前後の長期間にわたり勾留されるケースが常態化しています。法務省の管轄である拘置所・刑務所と、警察組織直轄の留置場とでは、監督組織の力関係や被疑者保護の観点において全く異なる運用がなされています。