雲丹(ウニ)、唐墨(カラスミ)と並び、「日本三大珍味」の筆頭に数えられる「このわた」。その歴史は古く、奈良時代の献上品リストにもその名が散見される。特に江戸時代に入ると、天下人・徳川家康をはじめとする歴代将軍や尾張徳川家などの権力者たちに愛好され、献上品としての格式を確立した。
ナマコの腸(はらわた)を丁寧に取り出し、塩漬けにして熟成させる工程は、まさに職人技の極致。ひと筋の糸のように細い腸から砂を完璧に抜き去る作業は、機械化が一切不可能な手作業の世界だ。徳川家康が宴の席で杯を重ねたという伝承は、当時からこの食材が最高峰の贅沢品であった証左にほかならない。