早朝7時30分。開店直前の静寂を切り裂くように、店の前にはすでに熱心なパン好きたちの列ができている。目当ては、1日わずか数本分しか仕込まれない限定の発酵バタークロワッサンだ。幾重にも重なった極薄の生地は、口に入れた瞬間にハラハラと崩れ落ち、芳醇なミルクのコクと小麦本来の甘みが爆発的に広がる。オープンからわずか30分で完売することも珍しくない、まさに幻の逸品だ。
さらに路地裏へ足を進めると、看板すら出していない「知る人ぞ知る隠れ家」ベーカリーが姿を現す。住宅を改装した隠れ家風の店内には、12時ちょうどに焼き上がる数量限定のハード系パンがひっそりと並ぶ。店主に直撃すると、「大々的に宣伝すると常連さんの分が無くなるから」と笑う。こうした極上の限定パンと隠れ家の存在こそが、この街を訪れる人々を魅了して離さない最大の秘密なのだ。