自閉スペクトラム症の視覚的特徴として最も多く指摘されるのが、視線交差のパターンである。ケンブリッジ大学のサイモン・バロン=コーエン教授らの研究をはじめとする精神医学の知見は、ASD当事者が他者の「目元」を見る時間が定型発達者と比較して短い傾向を明らかにしている。対人コミュニケーションにおいて、他者の視線や微小な表情変化から意図を読み取るプロセスに独自のメカニズムが存在するためだ。
表情の出力においても、周囲の状況や文脈との「非同期」が生じやすい。一般的な対話空間で期待される表情の変化と、本人が内部で感じている感情の出力タイミングがずれることで、周囲には「無表情」「あるいは不自然な微笑」として映ることがある。感情がないのではなく、感情の身体的表現方法が異なることが、誤解の根源となっている。