回腸導管造設術を控えた患者にとって、手術の身体的負荷や入院生活、家計への影響は大きな関心事です。臨床現場の数値基準を整理します。
まず回腸導管の手術時間は、膀胱全摘除術とリンパ節郭清、腸管の切離吻合、導管造設および尿管吻合を合わせ、概ね6時間から8時間前後を要します。ロボット支援手術(RARC)において体内ですべての吻合を完結させる体内尿路変向(ICUD)を選択する場合、執刀チームの熟練度によって手術時間は前後しますが、開腹手術と比較して術中出血量は大幅に抑えられます。
次に回腸導管造設術の入院期間は、順調に経過した場合でおよそ2週間から4週間です。手術翌日から早期離床を進め、術後数日で飲水・食事が開始されます。入院期間の後半は、創部の治癒観察だけでなく、患者本人および家族が退院後に自宅で自立してパウチ交換を行えるようにするための「ストーマケア自己管理指導」に充てられます。
費用面に関しては、本手術はすべて公的健康保険が適用されます。一般的な3割負担の場合、手術・麻酔・入院管理を含めた総医療費は250万〜350万円程度に達しますが、窓口で支払う自己負担額には高額療養費制度が適用されます。70歳未満で標準報酬月額28万〜50万円の一般的な所得世帯であれば、月ごとの自己負担限度額は約8万〜10万円程度に抑えられます。事前の「限度額適用認定証」の取得により、病院窓口での一時的な高額支払いを防ぐことが可能です。
さらに見落としてはならないのが行政の福祉制度です。回腸導管造設術によって永久的尿路ストーマを造設した場合、退院前後に指定医の診断書を添えて自治体の福祉窓口へ障害者手帳の申請を行うことで、身体障害者手帳(ぼうこう機能障害:原則4級)が交付されます。
手帳が交付されると、毎月継続して発生するストーマ装具(パウチや皮膚保護剤)の購入費用に対して、自治体の日常生活用具給付等事業から月額8,000円〜1万円前後の公費助成が支給されます。所得税・住民税の障害者控除や公共交通機関の割引も受けられるため、経済的負担は大幅に緩和されます。