「がん=耐え難い激痛が走る」という一般的なイメージは、外陰がんの初期鑑別においては完全に誤りです。むしろ、外陰部しこり痛くない状態こそが、発見の遅れを招く最も警戒すべきファクターといえます。
外陰がんの発生初期において、知覚神経が直接刺激されることは稀です。患者が最初に自覚する異変の約6割は「長引く頑固なかゆみ」や「皮膚のざらつき・ただれ」であり、しこりを認識した時点でも痛みを感じない人が大半を占めます。日常的にカンジダ症やかぶれを経験している女性ほど、「いつものデリケートゾーンの肌荒れだろう」と過小評価してしまいがちです。
特に注意を要するのが外陰パジェット病です。これは表皮内に生じる腺がんで、見た目が湿疹や白癬(水虫)、接触皮膚炎と酷似しています。赤褐色や白っぽい斑状の病巣が広がり、外陰部かゆみただれが数カ月〜数年にわたって持続します。市販のフェミニーナ軟膏や皮膚科で処方されたステロイド軟膏を塗り続けても全く軽快しない場合、表皮内がんを疑って病理組織検査を実施しなければなりません。
病期が進むにつれて現れる外陰がんステージと予後データについて、日本産科婦人科学会および国立がん研究センターの集計データを紐解くと、早期発見の重要性が浮き彫りになります。
がんが外陰または会陰に限局し、大きさが2cm以下の「ステージI」で治療を開始できた場合、外陰がん生存率(5年相対生存率)は約85〜90%と極めて良好です。しかし、病巣が隣接する尿道下部、腟、肛門へ広がるか、鼠径リンパ節へ転移した「ステージIII」になると5年生存率は約40〜50%にまで低下し、骨盤内臓器や遠隔転移を伴う「ステージIV」ではさらに厳しい推移を辿ります。痛みがない段階で「おかしい」と気づき、いかに早く医療機関へアクセスできるかが予後を左右します。