長崎の角煮を語る上で欠かせないのが、中国・宋の時代の詩人・蘇東坡が考案したとされる「東坡肉」だ。江戸時代の鎖国下、日本で唯一の海外貿易港であった長崎・出島を通じて伝来したこの豚肉料理は、日本の調味料や出汁文化と出会うことで独自の深化を遂げた。
和・洋・中が融合した長崎独自の宴会スタイル「卓袱料理」の代表的な一品として定着した角煮は、単なる豚肉の煮込みにとどまらない。砂糖と醤油、みりんや清酒を贅沢に使い、数日間かけてじっくりと煮込むことで、日本人の繊細な味覚に合わせた深みのある味わいへと昇華したのだ。長崎の気候と歴史が育んだこの郷土料理は、いまや日本を代表する最高峰の肉料理として君臨している。