歌詞検索サイト「歌ネット」等でも長年高いアクセス数を誇り、世代交代を経てもリスナーの間で考察が絶えない『黒毛和牛上塩タン焼680円』。一読すると「美味しい塩タンの焼き方を歌ったコミカルな曲」のように見えますが、その本質は「愛する人にすべてを委ね、心も体も貪り尽くされたい」と願う女性の極めて純度の高い性愛心理を描いたラブソングです。
大塚愛本人が当時のインタビューやメディアで語っている通り、本作の比喩(メタファー)は極めて計算され尽くしています。「タン=舌」「網=ベッド」「熱い火=昂る情熱」「レモン=刺激的なアクセント」という構図を当てはめて歌詞を追うと、言葉の持つ情景が一変します。
「ジューッと音を立てて火照る身体」「生焼けのままではなく、芯までじっくりと愛してほしいという焦燥感」「冷めないうちに早く味わってほしいという切実な願い」――。これらはすべて、男女の親密なベッドルームにおける機微そのものです。直接的な卑語を一切使わず、誰もが日常的に口にする飲食の風景に置き換えることで、生々しさを上品な色香へと昇華させるソングライティングの手腕は、当時のJ-POPシーンにおいても突出したオリジナリティを誇っていました。