映画ファンや批評家の間で「三谷幸喜映画の最高傑作」を巡る議論は常に白熱します。脚本の緻密さ、キャスト陣のアンサンブル、笑いとカタルシスのバランスを総合的に評価した編集部選定の歴代おすすめランキングTOP5を紹介します。
第1位:『ラヂオの時間』(1997年)|原点にして脚本の極致
三谷氏が主宰していた劇団「東京サンシャインボーイズ」の舞台劇を映画化した監督第1作。ラジオ局の生放送スタジオという極小の密室を舞台に、主婦の書いた素朴な脚本が、主演声優のワガママやスポンサーの都合で次々と改変され、宇宙空間のパニック劇へと暴走していく様を描きます。
「生放送中に尺を合わせなければならない」というタイムリミットサスペンスと、職人たちがトラブルをアドリブでねじ伏せていく連帯感は圧巻。脚本家・三谷幸喜の構造美が最も純粋な形で凝縮された不朽の名作です。
第2位:『THE 有頂天ホテル』(2006年)|グランドホテル形式の金字塔
大晦日の夜10時から年越しまでの2時間を描いたノンストップ群像劇。ホテル「アバンティ」の副支配人(役所広司)が、次から次へと持ち込まれる難題を解決しようと奔走するあらすじです。
汚職国会議員の潜伏、コールガールの珍騒動、歌を諦めたベルボーイなど、20人以上の登場人物たちのエピソードが複雑に絡み合い、年越しの瞬間に向けて美しく収束していくカタルシスは他の追随を許しません。
第3位:『ザ・マジックアワー』(2008年)|「勘違い」が織りなす極上の喜劇
暗黒街のボスの愛人に手を出した男(妻夫木聡)が、命を助けてもらう条件として伝説の殺し屋を探し出す羽目になり、映画撮影と偽って売れない三流役者(佐藤浩市)を雇うというシチュエーションコメディ。
本物のギャングと偽物の殺し屋が対峙する緊迫感の中、佐藤浩市氏が見せる「ナイフ舐め」をはじめとする命がけの怪演は日本喜劇史に残る名シーンとなりました。映画に対する三谷監督のノスタルジックな愛情が随所に溢れています。
第4位:『ステキな金縛り』(2011年)|法廷劇と落ち武者幽霊の奇跡の融合
失敗続きの若手弁護士(深津絵里)が担当した殺人事件の唯一の証人は、421年前に非業の死を遂げた落ち武者の幽霊・更科六兵衛(西田敏行)だったという奇想天外なプロット。姿が見える人と見えない人の視覚トリックや、法廷における論理的な立証劇が巧みな伏線とともに描かれます。西田敏行氏の圧倒的な愛嬌とユーモアが作品の推進力となっています。
第5位:『記憶にございません!』(2019年)|中井貴一の真骨頂と痛快な政界風刺
史上最悪のダメ総理と揶揄される黒田啓介(中井貴一)が、投石を受けて一切の記憶を失ったことから始まるポリティカルコメディ。記憶を失ったことで皮肉にも「純粋で真っ直ぐな男」へと生まれ変わり、腐敗した政治にメスを入れていく姿が爽快なテンポで描かれます。政治に詳しくない層でも直感的に楽しめる王道のエンターテインメントです。